MELLOW

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アサガオは夜を識らない。

ウミネコの声で目を覚ました。陽射しの射し込む車窓から外を見れば、前日の雨で増水した海上を飛沫を上げながら列車が進んでいた。夏の陽射しは白く、列車の軌跡を辿る曳波(ひきなみ)も白い。空は青、藍、碧。前方にはウミネコの集う穏やかな離島がより一層、緑緑(あおあお)と浮かんでいた。心は躍っているだろうか。それとも不安に圧し潰されそうか。ただ一つ、解(わか)っていることは。あの島で、夜を見ない生活が始まるんだ。雨降る夜の夢(きおく)を思い出す為に。アサガオは夜(アイ)を識(し)らない。 ▼もっとみる
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2045、月より。

──2045年に、人はまだ‘‘心’’を持っているだろうか。2045年。『技術特異点−シンギュラリティ−』が訪れると予見された年。 しかしそんな気配は露も見せず、代わりに人を助けるため生みされたアンドロイドたちは、 6つの世代を追って人間の生活に浸透している途中。「私は、月生まれのアンドロイドです」アンドロイド嫌いの少年「家入操」が地方都市で出会った女性は、月で生まれた最先端のアンドロイド。彼女は人の世界に憧れて研究所を脱走、人間に扮して喫茶店を経営し暮らしていた。異質な人物との出会いを果たした少年は、徐々に街の異様さを知ることになる。正体不明(?)神出鬼没の学生ネットアイドル。超人的な身体能力を持ち、裏の顔を持つ≪聖女/シスター≫。国の暗部組織、公安零課に所属する2人の刑事。若きギャング団を率いる圧倒的カリスマ。街は少年と‘‘誰か’’を、『≪機械仕掛けの運命デア・エクス・マキナ≫』で繋ぎ合わせていく──。 ▼もっとみる